はなけも完結しました。

6月から連載していた「花と獣」、完結しました。
華雨と東雲、白雨、箏姫というひとたちは、かなり昔から存在していたのですが、こうしてかたちにすることができてよかったです。お付き合いくださった方、製本版を購入下さった方、ありがとうございました!
更新はしばらくおやすみをして、秋~冬頃に、蒼穹の連載をはじめられたらと思っております。

以下、「花と獣」後日譚。(兄と雪瀬)
たしか書いていなかったはず… 記憶があいまい。

「雪瀬。おみやげ」
 投げてよこされた橙の実を、雪瀬は危うく取り落としそうになりながら、受け取った。
 橙の実は幼い雪瀬にはまだとても大きい。抱え上げたそれを、じ、と見つめて、「しわしわしてる」と呟いた。都から葛ヶ原まで長旅をともにしたという橙の実は、その間に一気に老け込んでしまったようだった。橙を抱えて濡れ縁にちょこんと座った雪瀬の隣に、兄が腰掛ける。兄からは葛ヶ原とはすこし異なる遠方のにおいがした。
「さおとにー」
 ひさしぶりに帰ってきた兄の袖を引いて、言う。
 こうするのも、三か月ぶりだ。雪瀬にはとても長かった三か月。
「みやこのはなし、して」
 ねだると、兄は微かに笑んで、かたわらに雪瀬を招いた。
 橙の実を抱いて、わくわくと兄が口を開くのを待つ。
 ――いまはむかし。橙の香のする思い出だ。

(終)

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